人間の体内では毎日、1日何千個というがん細胞が生まれていますが、正常時には免疫細胞によって排除されています。 しかし、免疫細胞は弱ってくるとすべてのがん細胞を殺しきれなくなり、がんが発症してしまうのです。その点に着目し、免疫力を強化することを目的にした治療法が「活性化リンパ球療法(免疫細胞療法)」です。
具体的には、患者さん自身のリンパ球を採取し、培養によって増殖・改良して、再び体内に戻すという治療法です。 患者さん本人のリンパ球を使うため、副作用がほとんどなく、それどころかQOL(生活の質)向上も期待できます。
そのため、大学や医療機関がこぞって研究を進めています。実際に治療を行っている病院やクリニックも増え続けており、今後ますます世界的に普及していくことでしょう。 ただし、またまだ新しい治療法なので医療機関で実力差が大きいのも事実です。治療実績や治療法のバリエーションなどをよく吟味し、ご自身に合ったクリニックを選びましょう。
活性化リンパ球療法にはさまざまな種類があります。ここでは「活性化リンパ球療法のパイオニアである星野泰三先生が開発した4種類の治療法をご紹介しましょう。 これらの治療法は患者さんのがんの進行状況や体調に合わせて使い分けられます。 また、ペプチドワクチン・樹状細胞治療や温熱療法などと併用することで、治療効果アップが期待できます。
がんと闘ううえで重要な「NK-T細胞」「NK細胞」「キラーT細胞」「ヘルパー細胞」の4つの免疫細胞をバランスよく増強する治療法です。
<4つの免疫>
NK-T細胞:リンパ球全体の働きを統括
NK細胞:抗がん物質を持ち、がん攻撃の先頭に立つ
キラーT細胞:がんのアポトーシス(自死)を促す
ヘルパー細胞:キラーT細胞を管理
混合型リンパ球療法をベースに、抗がん力の高いNK細胞とキラーT細胞をより強化させたものです。
従来型のNK細胞療法に比べ、NK細胞の抗がん物質(抗がん酵素やインターフェロン)を分子レベルで超高密度に培養しています。抗がん酵素や抗がん免疫物質をより強力に活性化させて、がんの殺傷能力を高めています。
複数のペプチドワクチンで刺激した特異的キラーリンパ球を誘導することにより、さまざまな顔を持つがん組織への対応を可能にした治療法です。 もっとも即効性があり、多様ながん細胞への対応が可能な威力の高いリンパ球療法です。
がん細胞は熱に弱いという弱点があり、しかも免疫細胞は体温が高ければ高いほど抗がん力を発揮できます。 しかし、ほとんどのがん患者さんは低体温状態に陥っているために、うまく免疫細胞が働きません。 ですから、「温熱治療」で併用し、患者さんの体温を上げることで、活性化リンパ球療法の効果がより高まることが期待できます。