オーストリア腫瘍学会会長(President of the Austrian Society of Oncology)
私達は、社会構造の変革を含む、大きな変化の時代に生きています。長寿と健康的な生活は、人類の永遠の夢でした。しかし、現在その夢は実現し、その長寿と健康的な生活の成就は、社会的な問題をもたらしています。
人口統計学的な変化としては、社会構造を象徴する年齢ピラミッドに大きな変化をもたらしました。そのピラミッドにおいて病気を患う人々の数は増加しており、人生最後の年、特に最後の数ヶ月間、健康保険会社に莫大な経済的負担をかけています。急増する高齢者や病人に対し最善の対策を計ることが、現在、医療保険の予算の主な関心事となっています。
北半球の死因の第2位であるガンもまた、医療費の高騰をもたらす疾患の1つです。いたるところで予算が削減される時代、医療の質の維持に加え、ガン治療における診察費と治療費もできる限り低く押さえなければなりません。様々な分析から、腫瘍学において統合医療という概念は、ガン患者の再発までの期間延長とともに、生活の質を向上させる鍵であるように思われます。統合医療という概念を形作る補完腫瘍学的な処置が、従来の治療をサポートした時、入院患者の数の減少と入院期間の短縮が認められるでしょう。そして、このような患者は、完全に通常の生活に戻り、また、質の高い生活を送り続けることでしょう。
これらの理由から、本号では腫瘍学における統合的な概念を構築することを目的としています。