獣医学領域にあまり詳しくない方もいらっしゃると思いますので、発表の前半に動物のガンについて簡単にご紹介したいと思います。実は、動物にも多種多様なガンが認められ、私自身は獣医師として動物のガン治療に携わっております。私の研究がヒトのガン治療にも応用できるのではないかと考えており、ぜひ参考にして頂けたらと思います。後半では、イヌとネコの腫瘍症例に「アガリクス茸」または「アガリクス茸+サメ軟骨」を投与した際の臨床効果を調査しましたのでご報告します。
動物の腫瘍について簡単にご紹介します。
これは口腔腫瘍です。上顎の先端にガンが認められます。このようなガンに対する放射線や化学療法の効果は思わしくなく、結局手術で切除します。しかし、手術には顔面が変わってしまうという大きな問題があります。さらに、口腔腫瘍の1年生存率は、約30%でと非常に低いのが現状です。
これは鼻腔内腫瘍のCT画像です。左の画像では、片側の鼻の中いっぱいに腫瘍が詰まっており、口の方にも腫瘍が入り込んでいます。また、右の画像では、目の下に腫瘍が入り込んでおり、さらに脳の先端も腫瘍に侵されています。放射線治療を行ったとしても腫瘍を小さくし延命することは可能ですが、完治は難しいというのが獣医学領域の現状です。
これは脳の断面の画像です。正常な脳(写真左)は血液脳関門というバリアーで守られており、簡単に薬剤は入らないため、造影剤を投与しても白く映ることはありません。しかし、ガン化していると写真右のように血液脳関門が壊れて造影剤が入り白く写ります。
これは、骨肉腫と言われる骨のガンのレントゲン写真です。両写真ともに、写真の左が正常な脚、右が骨腫瘍の脚です。骨肉腫は非常に肺転移しやすい腫瘍です。ヒトに比べると犬のほうが骨肉腫の発症頻度は高いと言われており、我々が犬の骨肉腫を診断した時点で、すでに9割には顕微鏡レベルの肺転移が認められる、まさしく全身療法が必要なガンの一つです。その他、皮膚腫瘍、軟骨組織腫瘍、乳腺腫瘍、肺腫瘍、肝臓腫瘍、腸腫瘍、膀胱腫瘍など、ヒトでも見られる様々な腫瘍が動物(イヌ・ネコ)でも見られます。