健康寿命と美に関する研究活動で培ったQOL(生活品質)の向上に役立つ情報をお届けします。

オーストリア腫瘍学会会誌2003

結腸ガンによって例証される遺伝的多型およびガンの危険性

D. Celeda

個々の遺伝子変異 別名、遺伝子多型として知られている変異は、人間において非常に一般的です。 これらの変異は、次の世代に遺伝し、個人の健康状態に悪影響を及ぼす内因性の酵素に有害な作用を示します。 遺伝的多型 遺伝的多型はもともと人間の体内に存在しており、次の世代へと遺伝します。それは、私たちの進化の一部であり、種族がどのように環境に順応してきたかを反映しています。通常、私たちの遺伝子プール中における遺伝的多型の変異は、点変異(DNA中の一塩基多型)です。さらに、遺伝子フラグメントの欠失(不対塩基)もしくは反復があります。一般に、遺伝的多型はそれぞれの酵素もしくはタンパク質の機能に影響します。例えば点変異では、1つの異常なアミノ酸がタンパク質に挿入され、その機能に影響します。欠失では、酵素あるいは酵素全体部分が欠け、その結果不活性化されます。

人間における遺伝的多型

遺伝的多型は、頻繁に人間に起こっています。例えば、ドイツ人の53.5%は、グルタチオンS-トランスフェラーゼM10/0タイプ(GSTM10/0)のキャリアです(Brockmueller他、1994)。これらの人々のGSTM1は、各遺伝子領域の欠失のため全く存在していません。肺ガン患者の治験より、患者の81%にGSTM1がないことが明らかになりました(Baranov他、1996)。さらに、GSTM1遺伝子の欠失は、重金属の増加レベル、特に歯科用金属に関係しています(Schmalz他、1997)。

他の研究では、これら遺伝的多型の多くが血栓症(Witt他、1998)、骨粗鬆症(Morrison他、1994)、歯周炎(Korman K.S.およびdi Giovinet F.、1998)および糖尿病(Pociot、F. 他、1993)のような様々な疾患に関連していることが示されました。これらの多型は薬理遺伝学の分野で非常に重要です(Facklam他、2000)。遺伝的多型は、ガンの進行および危険性に関して何年も議論されています。(Ambrosone他、1996、Minschinin他、1993、Lang 他、1994、Katoh T.、他、1999)。

診断における遺伝的多型

ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびヒトゲノム配列の出現により、多数の遺伝的多型を特定、調査することができました。今日、標準プロトコールとしてこれらの遺伝子調査を提供することができます。再発率を最小限に抑える手段として、治療と追跡調査への個別化したアプローチを考慮するとき、これらの方法が血栓症予防、骨粗鬆症およびガンの診断において特に有用であると証明されています。その上、これらの分析は、家族の既往歴に対応しており、個別化した予防を考慮します。 通常、適切かつ詳細な提言は診断において、重要な役割を果たします。

結腸ガンにおける遺伝的多型の役割

結腸ガンにおいて、2つの酵素(N-acetyltransferase 2 (NAT2)およびcytochrome p450 1A2(CYP 1A2))の遺伝的機能は明確な役割を果たします。NAT2正常者は、結腸ガンを発症するより高い危険性があります。白色人種/ヨーロッパ人種に標準プロトコールで遺伝子診断を行ったところ、NAT2遺伝子の3つの変異位置に応答があります(テーブル1参照)。これらの変異位置に、代々受け継がれるDNAの塩基置換(点変異)があります。変異(塩基置換)の数が、多かれ少なかれ、酵素活性もしくは合成に影響し、酵素はそれに従って分類されます(正常者(fast acetylator)、欠損者(slow acetylator))。以下のNAT2の変異位置は、白色人種起源のヨーロッパ人および北米人に由来するバンドと考えられます (テーブル1):

S1 (T/C塩基置換, pos 341)
S2 (G/A塩基置換, pos 590)
S3 (G/A塩基置換, pos 857)


白色人種(ヨーロッパ人)において、S1変異位置の遺伝子変異が45%発見されました。一方、S3変異位置の変異は稀でした。(Minchin他、1993)。アセチル化の過程は、多くの疾患で調査されています。染物師の職業に関連のあるガンの進行に関して、アセチル化の遅延とそれに伴う危険性が報告されています(Minchin他、1993)。さらに、タバコの消費およびアセチル化遅延の遺伝子型に関して、実質的に増加した乳ガンのリスクを持つ女性における、大規模な研究がありました(Ambrosone他、1996)。

しかしながら、結腸ガンの研究では、アセチル化について逆の結果が得られています。NAT2正常者は、結腸ガンを発症するより高い危険性があります。この危険性は1CYP 1A2であるならさらに増加します(Minchin他、1993)。 CYP1A2およびNAT2の遺伝学的に欠失のない酵素が焦げ肉の消費に関わるとき、結腸ガンのリスクは、さらに95%まで増加します(Minchin他、 1993)。

この増大するリスクの原因となるメカニズムは、遺伝学的に欠失のないCYP1A2およびNAT2酵素との競合反応の誘導によるものです。この過程は、焦げ肉の中に存在するアリルアミン類の活性化および解毒化から生じます。競合反応の最終生成物は発ガン性のDNA付加物です。それは身体で排泄できず、腸管の細胞に残留します(テーブル2)。

テーブル1:N-acetyltransferase2(NAT2)におけるS1、S2およびS3の変異位置の図(Minchin他、1993)。

テーブル2:アリルアミン変換における、結腸ガンのリスクを増大させる発ガン性DNA付加物へのCYP 1A2およびNAT2の競合反応図(Minchin他、1993)。
1. NAT2による正常の解毒化はN-アセチルアリルアミン類を生成します。

通常、焦げ肉におけるアリルアミン類は、身体によって排出されるN-アセチルアリルアミン類に変換されます。

NAT2触媒によるこの過程(N-アセチル化)では、アセチル基は窒素原子に結合します(テーブル2)。

しかしながら、正しく機能しているCYP 1A2は、NAT2の競合反応におけるアリルアミンの窒素原子にヒドロキシル化反応を引き起こし、その結果N-ヒドロオキシアリルアミンとなります。

テーブル3:N-acetyltransferase2(NAT2)の遺伝分析のサンプル結果左から右へ

第2段階では、NAT2触媒でヒドロキシル基をいわゆるO-アセチル化し、N-ヒドロオキシアリルアミンがアセトキシアリルアミンに変換されます。それは、腸管の細胞中でDNA付加物を形成、変異を誘引する産物です。アセチル化を促進する酵素であるCYP1A2およびNAT2の存在は、特に焦げ肉消費との組み合わせで、結腸ガンのリスクを増大させます。

したがって、CYP1A2およびNAT2両方の遺伝子調査が、2つの酵素のアセチル化/代謝過程の解明に非常に推奨されています(テーブル3)。これらの試験の結果は、競合反応によるCYP1A2の活性抑制の為のテーラーメイド食事計画、特定の薬の投与および栄養素の摂取のような予防措置を決める際の基準となります(テーブル4)。

その上遺伝子調査は、腸ポリープに対する規則的習慣的予防検査の必要性の判断に役立ち、治療後の再発を最小にするための追跡調査において明確な役割を果たします。

酵素物質CYP 1A2の活性を
抑制する抑制剤
CYP 1A2の
増加活性誘導因子
CYP 1A21. アセトアミノフェン1. a-ナフォフラボン1. 焦げ肉
2.アブラナ科の野菜,例. キャベツ, ブロッコリー,カリフラワー
3. オメプラゾール
4. タバコの煙
2. アセトアニリド2. アミオダロン
3. アミオダロン3. シメチジン
4. アミトリプチリン4. シプロフロキサシン
5. 芳香族アミン5. エノクサヒン
6. アリルハイドロカーボン6. フルオロキノロン
7. ベンゾピレン7. フルボキサミン (0.2 uM)
8. クロロトリアニセンv8. フラフィリン
9. クロルゾキサゾン9. インターフェロン?
10. クロミプラミン10. メトキサレン
11. クロザピン11. ノルフロキサシン
12. カフェイン12. ピベリジン酸
13. ダントロレン13. チクロピジン
14. ジエチルスチルベン14. ベラパミル
15. エストラジオール
16. エトキシレゾルフィン
17. フルタミド
18. ハロペリドール
19. イミプラミン
20. リドカイン
21. メトキシレゾルフィン
22. メキシレチン
23. パラセタモール
24. パラキサンチン
25. フェナセチン
26. プロパフェノン
27. プロカルバジン
28. プロプラノール
29. プロスタグランジン
30. タクリン
31. タモキシフェン
32. テオブロミン
33. テオフェリン
34. トルトラズリル
35. ベラパミル
36. ワルファリン
37. ゾキサゾラミン
38. 環状炭化水素
テーブル4:CYP 1A2によって活性化もしくは代謝できる物質および薬剤、CYP 1A2の活性を抑制もしくは減少させる物質
«
»